【コラム】児童養護施設等の退所者支援事業所 しいの木について
一般的に、子ども達は家庭の中で親などの保護者から経済面、精神面、教育面での庇護・バックアップを受けながら成長します。このような庇護・バックアップを受けられない子ども達は「一定の学業」を修めるまでは児童養護施設等で過ごし、その後は自活することになります。
「一定の学業」とは、基本的に高校卒業までです。近年では児童養護施設の大学進学率は少しずつ上がっていますが、それでも50%には届きません。万が一高校を中退した場合や、子どもが高校に進学をしなかった、できなかった場合、それよりも若い年齢で退所をするケースもあります。
学業を修了したら働く。当たり前のことですが、実際には「学校の授業についていく学力がない」「学校や社会に順応できるだけの状態ではない」など、本来であればより長期的なケアが必要な子ほど早期に社会に出なければならないという矛盾を抱えています。
もちろん施設や里親家庭で多くのスキルを身に付け、社会に出て順調に生活を送っている若者も多くいますが、社会の中でふと孤独感に苛まれ、家族の問題に直面し悩みを抱えている方も少なくありません。
清明寮は平成28年2月に「児童養護施設等の退所者支援事業所 しいの木」を開設し、社会に巣立っていった退所者の悩みや相談を受ける場として活動をしています。対象は浜松市内の児童養護施設や里親家庭から社会に巣立っていった方々です。現在まで延べ回数で500回以上、年間平均100回程度の相談を受けています。相談の内容は多様ですが、その中でも特に多いのが「仕事の悩み」「お金の悩み」「人間関係の悩み」です。
またしいの木では、高校生や中学生を対象としたセミナーを定期的に開催しており、社会で役に立つスキルや知識を学ぶ場として、また、子どもたちの仲間作りの場ともなるよう活動をしています。今年度は、コロナ禍によりオンラインでの開催となりましたが、浜松東ロータリークラブ様から寄贈いただいた防災セットも自立を控えた児童に贈呈させていただきます。ありがとうございました。
文 清明寮 養育2課長 しいの木 相談支援員 嶋崎郁夫