【コラム】地域の音楽文化(1)―浜松まつり―

浜松まつりの主役が、初子・初凧であることに異議を唱える人はいないでしょう。ただ、音楽文化を研究している私は、どうしてもラッパから目を離すことができません。
GWの浜松では、あたりまえのようにラッパが鳴り響いているので、もはや特別なこととは思えないかもしれませんが、よくよく考えてみると、なかなか面白い文化です。

日本で、お祭りの楽器といえば、昔から笛、太鼓、鉦あたりが定番で、ヨーロッパからやってきたラッパ(Bugle)を使うのは、かなり珍しく、これほど大勢の人々がラッパを手にしている例は他にはありません。

浜松にはラッパ奏者が、いったい何人いるのでしょう。

十数年前、あるテレビ番組は「浜松市に住む静岡県民の23%がラッパを吹ける」という、驚異的な数字を発表しました。もちろん、この種のバラエティ番組は、誇張するのが常です。しかしながら、その半分(11.5%)で見積もっても、やはり驚異的な数字であることにかわりありません(中区だけに限っても、20万人×0.115=23000人!)。

もう少し現実的に算出してみましょう。たとえば、浜松まつりに参加する一つの組に30人のラッパ吹きがいるとすれば、全体ではおおよそ5000人を超えることになります。でも、「子どもの頃には吹いていたけど、今は吹いていない」というような“潜在的ラッパ奏者”を含めれば、人数はもっと膨れあがるでしょう。

正確な数字はともかく、ラッパという金管楽器の発祥の地であるヨーロッパにおいてすら、これほど多くのラッパ奏者を擁している地域は、きっと存在しないでしょう(ラッパの演奏はなかなか難しく、誰でも簡単に音を出すことができる楽器ではありません)。
ということは、「ラッパを吹く人が世界一多いまち」として、ギネスブックに申請することだってできるのかもしれません。

たしかに、ピアノやオペラを知らない人に、その魅力を教えてあげて、愛好家を増やすことも、浜松市の音楽文化にとって良いことです。でも、そんな啓蒙活動よりも、すでに現状で「世界一」である文化を上手にPRしたほうが、ずっとコスパがよいと思うのですが、ヘイトする方も多いようで、残念です。

さて、今年はどうなるのでしょうか。

文:静岡文化芸術大学 教授 奥中康人