【コラム】浜松の歌謡曲(3)「浜松ブルース」
白根一男の「浜松ブルース」(1966)は、数ある「浜松ご当地歌謡曲」のなかで、もっとも有名な曲ではないでしょうか。「浜松ブルース」という曲名に、ある程度の高齢の世代は、そろって「そういえば、そんな曲もあったなぁ」と懐かしみ、稀に「今でも、カラオケで歌うことがある」という方も。
「浜松ブルース」を作曲したのは、佐伯一郎(1937~2020)。
雄踏出身で、ながく浜松を拠点に活動をつづけた偉大な音楽家です。
巨匠・船村徹の薫陶を受け、さまざまな歌手に楽曲提供するだけでなく、みずから歌い(LPやEPレコード多数)、さらにお弟子さんをたくさん育て、レコード・デビューさせた歌の先生であり、プロデューサーでもありました。毎年GWになると「はまホール」で開催されていたリサイタルを憶えておられるでしょうか。
私は、数年前、元浜町の「佐伯一郎音楽学院」にインタビューに行った日のことが忘れられません。
1990年代には音楽評論家の湯浅学らが、佐伯が作曲したマリア四郎「もだえ」(1968)を絶賛し、著名な編集者の都築響一は、佐伯がプロデュースした用心棒「MAMA…」(2000)を激賞したことで、全国的な注目を集めました。
YouTubeには、わたしが大好きな「三方原音頭」(1971)があります。
ソウル・ファンクな感じがたまりません。三方原では、今もこの音頭で踊っているのなら、うらやましいです。三方原(浜松市)の宝物ですね。
浜松が「音楽のまち」と自称するのであれば、浜松を活動拠点としつづけた演歌王の「人と作品」についても、きちんと顕彰したいものです。
アクトのショパンの隣に銅像など、いかがでしょう?
文:静岡文化芸術大学 教授 奥中康人